Hi-ROOMS明大前A

http://www.kkf.co.jp/design/keio/hi_rms_meidaa/

【明大前が火薬庫前?(その1)】 Hi-ROOMS明大前Aは京王井の頭線「明大前」駅から徒歩10分である。元々明大前駅は、第二山手線構想の中で山手急行との交差駅になる予定であった。そのため、駅から吉祥寺寄りの水道橋の部分は、複々線のスペースが確保され、未成線の山手急行の名残である。

【明大前が火薬庫前?(その2)】明大前駅は、開業時の駅名は「火薬庫前」という少々ものものしい名前であった。これは甲州街道沿いに江戸時代に徳川幕府の煙硝蔵(鉄砲・火薬などの貯蔵施設)があったことに由来している。そのために、この周辺地域では野火などの火の用心のためか禁猟となっていた。

【学生と共に歩いてみる】明大前の駅前は、学生で溢れている。たぶん明治大学和泉校舎の学生たちだ。学生たちにとって明大前は都合が良い。若者たちの街である渋谷にも吉祥寺にも電車で簡単にいける。Hi-ROOMS明大前Aは、その明治大学和泉校舎を越えた場所にある。久々に学生になった気分だ。

【線路沿いにある敷地を問う(その 1)】明大前駅から甲州街道へ向かって歩く。その甲州街道には学生のために大きな歩道橋がある。日中はさほど学生はいない。しかし、朝の登校時間には、歩道橋は学生で埋め尽くされるのであろう。大型の貨物トラックや工事用トラックを下に見ながら、歩道橋を超える。

【線路沿いにある敷地を問う(その 2)】歩道橋を渡りきると、すぐそこが明治大学和泉校舎の校門となっている。学生たちはそこに吸い込まれていく。その校門に吸い込まれそうな気持ちを抑え、脇の小道を進んでいく。その小道を進んでいくと、小さな橋が見えてくる。その橋の下には、電車が走っている。

【線路沿いにある敷地を問う(その 3)】それは京王線井の頭線であった。その線路沿いを下っていくと2棟のデザイナーズ物件が見えてくる。それがHi-ROOMS明大前AとBである。共に敷地が線路に面している。気になるのが音の問題だ。それぞれの建物がどのような解答を導き出したのか楽しみだ。

【異なる外観で対峙する双子】Hi- ROOMS明大前は、実は双子の建物である。建物の名称としては、分かりやすくAとBという表示である。双子でありながら異なる外観をしている。Hi- ROOMS明大前Bが煌びやかシルバーを身にまとっているが、Hi-ROOMS明大前Bはストイックな外観だ。

【倉庫のようなストイックな外観に何が起きているのか】その外観を見ただけで、それが住居であるとは誰も思わないはずだ。線路沿いにあるし、多分の電車の変電施設だと思うはずだ。しかし、これが住居であると判明したときに、人間はストイックな外観の中で何が起こっているか想像せずにはいられない。

【ストイックな外観はそれだけでセキュリティがある】最近ではセキュリティを高めたゲーテッドマンションが好評である。しかし地域のコミュニティが断絶する懸念がある。理想的なのは地域に開放しつつ防犯性を高める。その答えが、このストイックな建物にありそうだ。人を寄せ付けないけど、気になる。

【石と緑の廃墟の美学】もうすこし詳しく外観について説明しよう。Hi-ROOMS明大前Aの構造は鉄筋コンクリート構造を主としながら、コンクリートブロックを外装として使用している。そのコンクリートブロックが、廃墟のような悲壮感を漂わせているが、地面の緑がその悲壮感を癒してくれている。

【倉庫のような門扉を開ける快感】共用廊下となる部分には石畳となっている。その隙間に緑が生い茂っている。通常のマンションでは考えられないが素足で触れるとその緑がとても心地よい。そして、倉庫のような門扉の前にたつ。これが玄関ドアかと思うほどの重厚感だ。それを開けるのもひとつの快感だ。

【庭と空の間に(その1)】日本建築において庭とのつながりは深い。日本の庭園の特徴は西洋の閉鎖的な一部の特権階級により享受される特別な空間ではなく、すべての人間に解放されたフラットな空間であった。それは人間と建築と環境を繋ぐ日本美の魅力をそのまま表現したのが日本庭園であるといえる。

【庭と空の間に(その2)】その人間と建物と環境をひとつの小宇宙に集約した代表的な庭園が、借景庭園であるといえる。借景庭園とは、庭園外の山や樹木、竹林などの自然物等を庭園内の風景に背景として取り込み、前景の庭園と背景となる借景とを一体化させてダイナミックな景観を形成する手法である。

【庭と空の間に(その3)】その借景庭園の技法が、この建物の門扉を開けた時に目の前に現れた庭園に感じた。この庭園は周囲がコンクリートブロックにより閉ざされている。しかし、天空には真っ青な空がある。庭と空を体中に感じることができる。それは、物理的な開放感ではなく精神的な開放感である。

【白はすべてのはじまりの空間(その 1)】この中庭に面してエントランスがある。そのエントランスは、引き戸となっている。長屋的なエントランスであるが、鍵をかけることができるので、セキュリティには問題はない。というか、外部に面する鉄扉をみて、これが住居であると思う人は多くはないはずだ。

【白はすべてのはじまりの空間(その 2)】エントランスから中へ。そこは白の世界が広がっている。全てが白で統一されている。床も白の長尺シートとなっている。これは生活のはじまりの空間だ。この真っ白なキャンパスに自分らしさを表現する色をつけていきたい。そう思わせてくれる空間となっている。

【メゾネット、そして浴室へ】この部屋はメゾネットとなっている。1階はLDKとなっており2階がベッドルームと浴室となっている。2階へ上がる階段は溶解亜鉛めっき仕上げのスチールとなっているが、白の空間には違和感なく溶け込んでいる。フルオープンの浴室は、閉ざされた空間でも開放感がある。

【音の問題の答えを探る】生活するうえで音とは何か。まったく無音というのはあり得ない。そこにはテレビから笑い声があり、ラジオからアーティストの歌声がある。確かに雑音は気になるかもしれないが、逆位相波の笑い声と歌声をもって立ち向かうことによって、音の問題はきっと解決するだろう。(完)

http://www.kkf.co.jp/design/keio/hi_rms_meidaa/