イプセ恵比寿

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【EbisuとYebisuの違い(その1)】イプセ恵比寿はJR山手線恵比寿駅から恵比寿ガーデンプレイスの方面から向かうのが近い。恵比寿の地名はヱビスビールに由来する。そのヱビスビールは、サッポロビールの前身である日本麦酒醸造會社にカール・カイザーを招聘して醸造されたビールである。

【EbisuとYebisuの違い(その2)】恵比寿は、サッポロビール本社や複合型施設である恵比寿ガーデンプレイスなどが所在し、日本を代表するビールの街として発達した。そのためビール広場・ビール坂などの名称が残っている。通常はEbisuだが、サッポロ関係はYebisuと表記される。

【閑静な住宅街である恵比寿】イプセ恵比寿は駅からすこし歩くが、道がフラットなので疲れない。また、駅からの住宅街は、高級住宅街でもその建物のクオリティの高さには驚かされる。古くからの住宅も残っており、土地の細分化があまり進んでいないので、街並みとしての完成度が高いように感じるのだ。

【突如現れるシルバーの物体(その 1)】恵比寿の街並みは、ヒューマンスケールの街並みである。あまり高い建物がないので、空を見上げることもあまりない。今日のように大寒なのに小春日和で雲ひとつない青空では、おもいっきり背伸びをしながら、空を見上げたくなる。その時、シルバーの物体を見た。

【突如現れるシルバーの物体(その 2)】それは低層の街並みに突如現れた変異物体のような建物である。外壁はシルバーのガルバリウム鋼板が魚の鱗のように規則正しく並んでおり、若干の鋼板の歪みが陽の光を優しく受け止める。その歪みより生まれる光のオーラは建物が生き物ような存在感を与えている。

【不規則な窓がその空間の多様性を表す】外壁と共に窓の多さに目が奪われる。大小様々な大きさの窓が散りばめられている。それは銀河に輝く小惑星のような感じだ。また、不規則に配置される窓を見るにつけ、その空間はさぞや多様性に富んでいることを期待させてくれるのである。それがイプセ恵比寿だ。

【虎穴に入らずんば、虎子を得ず的エントランス(その1)】建物に近づくと、イプセ恵比寿が街並みとは同化せず異様な佇まいを感じさせる。エントランスに目を向けるとそこにはガラス張りのエントランスがある。デザイナーズマンションの時として近寄りがたい雰囲気を発するエントランスが少なくない。

【虎穴に入らずんば、虎子を得ず的エントランス(その2)】しかし、そのエントランスの近寄り難さが、デザイナーズの特長とも言えるであろう。このエントランスを思い切って乗り越える勇者だけが、デザイナーズマンションに住めるのである。それは虎穴に入らずんば、虎子を得ずということなのである。

【本物の打ち放しコンクリートのエントランスホール(その1)】エントランスホールの内壁は仕上げ材がなく、剥き出しの打ち放しコンクリートの洗練された空間となっている。打ち放しコンクリートには、実は本物と偽物がある。正確には整形したか、整形していないかと表現したほうがいいかもしれない。

【本物の打ち放しコンクリートのエントランスホール(その2)】打ち放しコンクリートの整形とは、着色しているかどうかである。これは施工中に綺麗に充填できないときに空気の気泡が残ってしまう。それをモルタルで埋めて塗装で誤魔化すという方法である。その見分け方は簡単に判断することができる。

【本物の打ち放しコンクリートのエントランスホール(その3)】それは、手で触ってみることである。着色をしていない打ち放しコンクリートは表面がツルツルしている。しかし、着色しているコンクリートはザラザラしている。見た目では分からないが触るとすぐ分かる。もちろん、イプセ恵比寿は本物だ。

【ホテルライクな共用廊下】エントランスで、デザイナーズの真骨頂を体験するして、オートロックドアを抜けるとそこから住居者専用のゾーンとなる。そこは、快適性を追求した作りとなっている。まずは空調で温度湿度が完全に調節されている。そして、床はカーペットだ。ハイヒールの音も気にならない。

【ライブハウス的ワンルーム(その 1)】エレベータで7階を目指す。エレベータも白基調となっており清潔感を感じる。7階に着くと702号室の部屋を開けた。そこは部屋という概念を覆す空間が広がっているのであった。本来部屋というのは玄関があり、ちょっと廊下があり、その先に客間や居間がある。

【ライブハウス的ワンルーム(その 2)】すべての部屋はドアというもので区切られ、生活のスタイルを切り替えることができる。しかし、この部屋は入ったときにすべてが降りかかる。玄関、居間、客室、寝室すべてのカテゴリーがひとつのハーモニーとなっている。これはライブハウス的ワンルームである。

【水回りはコンパクトにまとめられている】確かにライブハウス的ワンルームであるけれども、すべてがひとつの空間に収まっているわけではない。水回りがライブハウス的ワンルームとは分割されている。メゾネットの1階部分は、キッチンとトイレ。2階部分、はバスルームとパウダームールとなっている。

【構造から生まれる歪を収納として生かす(その1)】この建物は外観だけをみるとどのような構造なのか、鉄筋コンクリート造なのか鉄骨造なのかすら分からない。部屋に入ることによって、その構造がわかる。鉄筋コンクリート構造である。しかし、通常の採用されるラーメン構造とはすこし異なっている。

【構造から生まれる歪と収納として生かす(その2)】通常のラーメン構造では、梁と柱が直行している。この壁は、都市計画の日影規制により傾き、そのために柱と梁を直行させるのではなく、格子のように捉えて構造を作り出している。そのために空間に歪が生まれている。それを収納として活かしている。

【何よりも、これが一番大事ですよ】構造により生まれた歪を収納と窓にすることによって、空間としての無駄をなくし魅力的な大空間を作り出している。でも、窓からの外の風景が格別である。恵比寿では周りに高い建物はない。閑静な住宅街を歩独り占めだ。自分だけの街を妄想するものも悪くない。(完)

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