イプセ新宿若松町

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【若松河田はコンビ名ではありません(その1)】イプセ新宿若松町は、都営大江戸線「若松河田」駅から徒歩5分ほどところにある。若松河田というのは、品川庄司や増田岡田のように芸人のコンビ名とはまったく関係がない。実は、由緒正しき大名屋敷があったところなのである。その名残がいくつかある。

【若松河田はコンビ名ではありません(その2)】かつて数々の大名屋敷があったという若松町と河田町の周辺は、明治以降、武家の解体によって畑になった土地を利用し、小規模な住宅街を形成してきた。山の手の地形を反映した坂も現存し、団子坂、夏目坂、銀何坂など、東京ならではの風情を残している。

【若松河田はコンビ名ではありません(その3)】また若松河田のランドマークといえば、広大な敷地の「東京女子医大」と箱根山の絶景が自慢の「都営戸山ハイツアパート」である。また、地域のボランティアも参加してお屋敷をリニューアルした「小笠原伯爵邸」が加わり、注目されるエリアとなってきた。

阿弥陀籤的な外観(その1)】若松河田駅を降りて、しばらく歩いていくと奇妙な地面が見えてくる。その地面は赤・青・白の幾何学的な模様で通常の道路では見ることができない。もし、これが道路にあったらドライバーはどのように運転すればよいか、悩んでしまうであろう。その地面の先に建物がある。

阿弥陀籤的な外観(その2)】イプセ新宿若松町の外観は派手だ。オフィスビルのクールな感じや住居の落ち着いた佇まいもない。それは阿弥陀籤的な外観である。阿弥陀籤は阿弥陀如来に由来する。昔は放射線状に線を書いて、阿弥陀仏の後光に似ていたために名付けられた。この建物も後光を放っている。

枯山水とガラス(その1)】エントランスに向かう。エントランスの通路も真っ直ぐではなく少し蛇行している。エントランスホールには白い玉石と黒い玉石による坪庭が表現されている。本来であれば、植栽などを取り込んで緑豊かにするところであるが、ここでは枯山水のように抽象的な表現をしている。

枯山水とガラス(その2)】枯山水とは、池や遣水などの水を用いずに石や砂などにより山水の風景を表現する庭園様式であり、禅の思想をかたちに表した抽象美術でもある。そして、エントランスホールの壁に施されたガラスのタイルの透明性は、天空を表現しているようだ。ここには、天と地が存在する。

【飛び石的な共用廊下】エレベータで上階にあがる。エレベータのドアが開く。共用廊下は間接照明が多用することによって通路幅の狭さを感じさせない。そして、床のカーペットのところどころには人工大理石が用いられており、日本の邸宅にあるような門から玄関ドアまでの飛び石のような高級感を感じる。

【キッチンと洗濯機の相性(その1)】キッチンには様々な家電製品が必要だ。冷蔵庫、電子レンジ、オーブントースター、炊飯器など、いわゆる白物家電だ。名前の由来は見た目の色が白かったことからだといわれる。この色は清潔感が演出しやすかったからとも言われているが、最近は白ではなく黒もある。

【キッチンと洗濯機の相性(その2)】白物家電の中で高度経済成長期に三種の神器とも呼ばれたのが洗濯機である。洗濯機は洗面所に近い所に設置されることが多いが、最近はキッチンと一緒になっている。この部屋ではキッチンの調理台の下に洗濯機がある。白物家電なのでキッチンとの相性もバッチリだ。

【クローゼットと寝室の相性(その1)】クローゼットは当然ながら寝室とセットになっている。しかしクローゼットは使い勝手のよい空間である。寝室の鉄筋コンクリートの柱が出っ張ってしまった時に、その部分を隠すようにクローゼットにしてしまえばよい。この傾向はウォークインクローゼットに多い。

【クローゼットと寝室の相性(その2)】しかし、イプセ新宿若松町のこの部屋は、寝室にクローゼットがない。ウォークインクローゼットが玄関ドアの脇にある。シューズクローゼットとは別にある。寝室に無駄な空間がないならば、ウォークインクローゼットは寝室の近くになくても機能することができる。

【清潔感が問われるモザイクタイル】最近では壁材の性能が向上して、水周りであっても使用できる石膏ボードがあり安価なので、タイルではなく石膏ボードを使うケースが増えている。しかし、水周りといえばタイルである。特にモザイクタイルは目地が多いので清潔にしないと、カビが生えるので要注意だ。

【こんな遊び心もありです】トイレと寝室を遮るものが壁ではなく、ガラスとなっているのは驚きである。ガラスといっても透明ガラスではなくすりガラスになっているので、見えるわけではない。さらに透明度がかなり低いので、人影も分からない。特に意図があるものではなく、デザイナーの遊び心である。

【収納の微分積分(その1)】ウォークインクローゼットは、収納というよりは大きな空間である。結局のところ、ウォークインクローゼットの中で、もう一度モノを組み上げていかなければいけない。そのためには、空間を小分けする道具が必要となってくる。まずは空間を微分していかなければいけない。

【収納の微分積分(その2)】収納できる場所が、すでに微分されていたら魅力的だ。なぜならば自分で小分けする労力が必要ないからだ。この部屋では、至る所に微分化された収納が散りばめられている。そして、そこに積分していくのは楽しい。自分を表現する空間となる。あくまでも自己満足の世界だ。

【間接照明の効果】寝室には間接照明が施されている。間接照明とは、光源からの直接光を使用せず、壁面・天井面などで反射させてから作業面を照らすものである。効率は悪くなるが、照度を均一にしやすく、雰囲気のある照明が可能となる。この部屋のように天井が高い場合でないと、おすすめはできない。

【バルコニーのウッドデッキの是非】バルコニーのウッドデッキは維持管理が大変なので大半の賃貸にはない。しかし、小さなバルコニーでもウッドデッキを施すことでグレードが上がり、入居者の気分も変わる。最近では腐らないウッドデッキもある。選ばれるデザイナーズにはウッドデッキは必須だ。(完)

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