KINOWA

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江田駅ってどんなところ?】東急田園都市線で渋谷から各駅停車で30分ぐらいのことにある駅で典型的な郊外のベッドタウンである。駅はこじんまりとしているが東急ストア、ユニクロ、診療所があるので住むうえで不自由なことはない。最近は30代の若夫婦が戻ってきているので、街として活気がある。

【幼稚園のような可愛らしい雰囲気】江田駅を降りて歩くこと2分。低層の長屋のような住宅が見える。それがKINOWAである。2階建ての木造で、中心にはシンボルツリーである菩提樹があり、その木の周りが入居者のためのガーデンとなっている。子供たちが楽しく遊んでいる。まるで幼稚園のようだ。

【郊外だから許される19戸の魅力】KINOWAの総戸数は19戸である。マンションでは少ない戸数だが、このようなテラスハウスの賃貸物件だと、たぶん都心ではお目にかかれない。都心の土地では、天高く建物を作らないと賃貸は成立しない。郊外の土地だから許される地に足のついた感じが魅力的だ。

【でっこみひっこみのエントランス】玄関ドアは、すこし上がったところにある。入居者は木製デッキの5段のほど階段をのぼって、それぞれの玄関ドアを目指す。玄関ドアの位置は、建物形状によって、平面的みるとバラバラである。でも、それにより隣りの部屋とのプライバシーが保つ役目を果たしている。

【やっぱり無垢フローリングが好き】玄関ドアを開けると、普通の賃貸物件とは違うということを直感できる。その要因となっているのは、無垢フローリングの存在感である。目で見ても、その自然な斑が美しく、そして、足で触れるとその木の温かみを感じ取ることができる。やっぱり日本人は無垢材が好き。

【段差のあるリビングダイニングキッチン(その1)】玄関ドアの右斜め前に階段があり、左斜め前にはプライベートの中庭がある。その中庭を囲んでいるクリアガラスから向こう側の広いスペースを見ることができる。そこはリビングダイニングキッチンとなっている。しかし、普通とは形状が異なっている。

【段差のあるリビングダイニングキッチン(その2)】それは、リビングとダイニングキッチンの間に4段ぐらいの階段があり、それにより空間を分けている。安易に壁によって分けるよりも開放的である。さらに、階段に家族で横一線で並んで、外のガーデンを見ながら談笑するのも心が癒され楽しいだろう。

【大事なところは塗装で仕上げる】玄関ドアから気になる存在である。それは階段だ。吹き抜けとなっているので、2階から降り注いでいる光によって階段が一段とキレイに目に映る。その階段の壁だけ塗装を使用している。他の壁はクロスだが、大事なところを塗装で仕上げることにより、空間の質は高まる。

【段板から生えてきたスチール(その1)】階段は無垢のフローリングと使用している木材は異なるが、着色することによりフローリングの一体感を図っている。さらに、この部屋の手すりはキレイだ。手すりがキレイという表現は掃除が行き届いていることではない。その姿形に無駄がなくシンプルで美しい。

【段板から生えてきたスチール(その2)】そのシンプルな手すりを実現しているのが、あたかも段板からスチールの手すりが生えているような納まりである。これは後固定する手すりと比較して、下準備と段取りが綿密に行われていないと実現できない。この現場の潜在的なクオリティの高さの証明でもある。

【シンプルすぎる手すりの顛末】シンプルで美しい手すりは、下手に空間のイメージを邪魔しないのがよい。しかし、シンプルで美しい手すりは、完璧という訳ではない。美しさのために犠牲にしたものがある。それは安全性である。美しいバラには棘がある。シンプルで美しい手すりには、安全ネットがある。

【光庭のある暮らし】2階にあがるとそこには中庭がある。1階にも中庭があったが、2階の中庭は光庭と表現したほうがいいかもしれない。光庭の3面をガラスとすることによって、多くの光を部屋に取り込むことができる。物干しの場所と限定するにはもったいない。光庭のある暮らしをもっと楽しみたい。

【収納充実の寝室は決して狭くない】2階には南北に寝室が2部屋ある。その大きさは4.8畳と6.1畳ということで、あまり大きくはない。しかし、収納が十分にある。ワンルームであれば、その部屋で生活を完結する必要があるが、KINOWAのように大きな間取りでは、寝室を大きくする必要はない。

渡り廊下走り隊に思い出あり】2階の2つの寝室を繋いでいるのが、廊下である。しかし、その廊下は片方が光庭でもう片方が階段となっているので、開放的な雰囲気は、渡り廊下のような錯覚を起こしてしまう。小学校のときに渡り廊下を全速力で走って、怒られたことが今日のことにように思い出される。

【夜だけでなく昼も入りたいお風呂】2階には洗面所と浴室がある。浴室はFRP防水で仕上がっており、そこに浴槽を設置している。また、光庭に向けて横長窓を設けているので浴室が明るい。昼であれば太陽の光を浴びながら、そして、夜であれば星空を眺めながらリラックスタイムを楽しむことができる。

【現在版住宅すごろくとは(その1)】「住宅すごろく」という言葉をご存知だろうか。高度経済成長のときだが、木造アパートから始まり、賃貸マンション、分譲マンションを経て、ゴールとして庭付き一戸建てを所有するというストーリーである。しかし現在ではあまりリアリティを感じることはできない。

【現代版住宅すごろくとは(その2)】現在では住まいのあり方は、多様性に富んでいる。ゴールとして庭付き一戸建てを選ぶ人は少なくなっている。KINOWA のような賃貸で庭付き一戸建ての擬似体験をすることもできる。庭付き一戸建てを売り払い、セキュリティの高いマンションを購入する人も多い。

【現代版住宅すごろくとは(その3)】住まいに勝ち負けはない。庭付き一戸建てが全てにおいて優れているわけではない。大切なのは、自分のライフスタイルを見つめ直し、身の丈にあったライフスタイルを楽しむことである。そのひとつとして既存の空間に自分の思いを描けるリノベーションがある。(完)

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