ALBA

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ゆりかもめに近未来を感じたあの頃】新橋と東京臨海副都心を結ぶ交通機関として、1995年に開業したのが新交通ゆりかもめである。僕は10年ぶりのゆりかもめであった。当時は汐留地区は開発の真っ只中で、ここから新しい都市が生まれるという興奮と共に、AKIRAのような近未来を感じていた。

【芝浦の名前の由来】「芝浦」とは芝の浦の意味があり、もともとは芝一帯の東京湾を指す言葉であったそうだ。この地名に見られる「芝」とは、文字通り芝のことで芝が生い茂った地であり、その沖の海岸部分であったので「芝浦」と呼ばれるようになったらしい。しかし、現在ではその名残は残念だがない。

芝浦ふ頭はデザイナーズマンションが切り開いた】芝浦ふ頭駅の周辺は、ゆりかもめができる前まではJR田町駅都営地下鉄三田駅が一番の最寄り駅であったが、徒歩20分もかかるので住居としての可能性は低かった。この地域の住居としての可能性を引き出したのが、デザイナーズマンションであった。

【倉庫の中に現れるデザイナーズマンション】芝浦ふ頭は倉庫が多いので、区画整備がしっかりとされており、大型車両も通れるように道路が広い。そのような点で考えるとル・コルビジュエが考案した未来都市像「輝く都市」に近い。でも住居がないので寂しい。そこにデザイナーズマンションが突如現れた。

【外観はやっぱり倉庫のようで】芝浦ふ頭駅から徒歩1分。かなり近いところに建っているが、周りを見渡してもそれらしき建物が見当たらない。倉庫の中に同化していた。倉庫のようなグレーの外皮を装いながらも、部屋の中は魅力的であるというレトリックを用いているところに日本人の奥床しさを感じる。

【カラダを保護する外断熱】ALBAの外観は倉庫に似せているのではなく、そこに大きな意味がある。コンクリート打ち放しはカッコいい。しかし、人間で例えれば裸で立っているようなものだ。特に芝浦は塩分を含む海風が吹き込み、建物のカラダには厳しい環境だ。外装は建物の躯体にとって大切なのだ。

【エントランスに存在する2面性】建物に近づいてもエントランスらしきものが見えてこない。建物の目の前にきて、やっとエントランスであることがわかった。この建物のエントランスは打ち放しコンクリートのストイックなつくりで、さらにオートロックドアがガラス張りで、強さと儚さを併せ持っている。

【ガラスブロックからの柔らかい光】エレベータに乗り7階を目指す。共用の片廊下に面して玄関ドアとガラスブロックが並んでいる。玄関ドアを開けて部屋に入ると、ガラスブロックが柔らかいな太陽光を部屋の中に取り込みながらも、ガラスブロックの厚みで部屋の中が透けないという仕掛けとなっている。

【ムラがあるこそ本物の証(その1)】部屋に入って一番最初に目が奪われるのは、打ち放しコンクリートの壁である。デザイナーズマンションには必要不可欠であるが、実はキレイとは程遠いムラのある材料である。よく見ると均一なグレー色ではない。なぜ、打ち放しコンクリートは人々を惹きつけるのか。

【ムラがあるからこそ本物の証(その 2)】なぜならば、そこに本物の証明だからである。打ち放しコンクリートは均一な工業製品とは違う。過酷な建設現場で、品質を保持しながら現場の職人のチームワークの結晶だ。そこには、人間には作り出せない自然のムラが生まれる。このムラに人は惹き付けられる。

【ちょっと見上げてみよう(その1)】デザイナーズマンションの魅力は高さへのこだわりがあるかということだ。僕たちは空を見上げることがなくなった。それは忙しい毎日の中で心が疲弊してきて、ちょっとでも気をゆるすと足元から崩れ落ちそうになる。だから、足元しか見えていないのが現代人である。

【ちょっと見上げてみよう(その2)】そのような現代人に警笛を鳴らしているのが、このデザイナーズマンションである。心を開放して、ちょっと見上げてみよう。そこには吹き抜けにより無限に広がるあなただけの小宇宙が広がっている。そこで、あなたはすべての束縛から自由になることできるであろう。

【デザイナーズマンションにとって実は一番重要な要素とは(その1)】10年ぐらい前からか、定かではないがデザイナーズマンションは産声をあげた。今では立派な地位を築いている。生まれたての頃のデザイナーズマンションは使いにくかった。しかし、視覚的なデザイン操作を行うことで克服してきた。

【デザイナーズマンションにとって実は一番重要な要素とは(その2)】しかし、絵画やグラフィックとは違うので視覚的に美しくてもそこに実際住むということになると話は違ってくるのだ。何もないところで住むわけにいかないので、いろいろとモノが置かれる。そうすると徐々に視覚的な魅力は失われる。

【デザイナーズマンションにとって実は一番重要な要素とは(その3)】視覚的な魅力を活かすためには、あらかじめモノをどのように配置するか、もしくはどのように収納するのかということを綿密に考えなければいけない。住み手のモノの配置は関与できないが、収納で作り手はモノをコントロールできる。

【デザイナーズマンションにとって実は一番重要な要素とは(その4)】この部屋は壁面の打ち放しコンクリートを活かすために収納が充実している。大から小まで様々な箱が用意されており、無意識に収納するように巧みにコントロールされている。それは強制ではなく自発的だ。だから住んでいて心地よい。

【エアコン・イン・収納】この部屋はエアコンも一工夫している。それは収納の上部にエアコンを入れ込んでいるのである。そうすることによって部屋の魅力が失われない。エアコンの外形は流行り廃りがあり、今はかっこよくても3年後には古く見える。できれば、やっぱりエアコンは隠しておきたいものだ。

【天井が高いのはあらゆるポテンシャルを高める】この海岸3丁目はデザイナーズマンションがとても多い。どれもが吹き抜けや天井高が高いのが特徴だ。普通のマンションは天井高をギリギリにして部屋を多く作る。ここでは場所と空間と建築の可能性を追求した結果が、この天井高に具現されている。(完)

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