レガーロ八雲

http://www.kkf.co.jp/g/tokyo_t/regalo_yaku/

日中の交通量は平日、休日ともに多い。駅からは歩く距離を感じるが、個性的なお店を見ながら歩くのは、楽しい。それにしも交通量は多い。排気ガスと照りつける太陽は、私の体力を奪っていった。その中で気になるお店があったので入ってみることにした。外観はガラス張りで個性的な街並みの中で独特だ。


そのショップのエントランス前は、ちょっとしたスロープになっている。そのスロープはこげ茶色のレンガで出来ている。そのレンガと外壁のガラスは対照的であった。物質との塊としてのレンガと透明で爽やかなガラス。その見事なハーモニーがとても心地よかった。このショップは巷では有名かもしれない。


なぜならば、ショップの中は多くの人が買い物を楽しんでいた。1階は雑貨を扱っているようだ。デザインに優れた雑貨を見るのは、とても楽しい。機能性よりも自分らしく暮らすためのヒントがたくさん詰まっている宝箱のようなショップであると私は感じた。ショップの中央には、木製の大きな階段がある。


2階へのぼる階段のようだ。2階にはオリジナル家具が展示されていた。部屋の雰囲気をだすために床がフローリングとなっていて、そのフローリングもホワイト、ナチュラルブラウン、ダークブラウンとさまざまな色が混在していて、混沌した独特な空間を醸し出している。3階へは屋外階段から行けそうだ。


3階へ登る階段は正面のガラス張りとは異なり、綺麗な打ち放しコンクリートであった。3階は展示場とショップのオフィスとなっていた。展示場ではショップ一押しの最新の家具が飾られていた。その家具は、今までの家具とはすこし異なっていた。すごく不安定でゆるい家具であるような印象を私は受けた。


その家具は大きなフレームがまず第一に存在する。その大きなフレームの中に大小さまざまな、色も素材もさまざまなボックスが埋め込まれている。その中では自由に配置できる。物置の一部を抜き取ってきたような感じもする。でたらめにモノを配しても、個性的な絵になる不思議な家具であると私は感じた。


このショップでかなりの時間を過ごしてしまった。今回の目的であるあの物件を私は目指した。太陽はかなり傾いてはいたが、まだまだ元気よく照り続けている。朝から照り続けらていたアスファルトの車道からは湯気が立ち上がり遥か遠くに蜃気楼が見えている。その蜃気楼の先に物件があることに気づいた。


蜃気楼のように浮かび上がっていたこの建物の外観は、白であった。大通りからすこし入ったところに建っていたが、排気ガスの影響は免れないようだ。外観の大きな開口部でグリッド状に規則正しく配置されているのは初期モダニズムのような律儀な印象を受ける。エントランスは大きなガラスドアであった。


鍵を差し込むと大きなガラスドアは音もなくゆっくりと開いた。建物のなかに入ってみると共用廊下は意外と広く、床の石畳も美しく配され目にやさしい。さらに、共用部として中庭が設けられており中庭に配されたグリーンは天から降り注ぐ光線と戯れていた。私はエレベータに入り、3階のボタンを押した。


エレベーターが3階につき、私は降りた。306号室はエレベータを降りてすぐの部屋であった。この建物の部屋番号を表すロゴが特徴的であった。部屋番号とインターフォンが一体となっていた。インターフォンのマイク以外の部分のスペースにロゴがつけられており、視覚的に分かりやすいサインであった。


玄関ドアを開けるとそこには、靴脱ぎ場がなくキッチンまで土足でいけるようになっていた。私は日本人なので、このようなつくりにすこし抵抗を感じたが、良く考えてみると靴を脱ぐというのは独特な風習である。近代的な国家となった日本においても、古来からの靴脱ぎが続いていることは不思議であった。


ヨーロッパでは玄関で靴脱ぎをする場所はない。玄関にあり方について考えてみることにした。上足と下足の境界はどこかで必要となる。ヨーロッパではベッドに入るときに靴を脱ぐのであろう。ということはベッド以外はすべて玄関であるということなのかもしれない。そう考えると日本の玄関は異常に狭い。


狭い玄関に何の魅力があるのか、ということを問いただしているように感じる。例え部屋が狭かったとしても、客人を迎え入れる玄関は大きく心地よい空間であることが重要である。玄関は部屋(家)の顔であると昔の人はよく言っていた。この部屋では、自分オリジナルの玄関作りが出来るだろうと私は思う。


玄関の脇は洗面所と浴室の扉となっている。この扉は開き戸ではなく引き戸となっているので扉の回転によるスペースの確保がいらない。日本の木造の家屋は、昔から扉はすべて引き戸であった。いつからか日本の家は開き戸に変わってしまった。その理由として考えられるのは、家の気密性の問題と関係する。


部屋の環境を一定に維持するためには、部屋の気密性を高めることが重要である。引き戸では隙間が多すぎて気密性が保てないので開き戸にする。しかし、日本の風土は高温多湿だから、風通しをよくしたほうが実は家にも人間にも良いのだ。その点からして、日本の昔の家屋は良く考えられていたと私は思う。


洗面所の引き戸を開けると、そこには大きな洗面台とトイレがあった。洗面台は朝起きて最初に顔を洗うところであり、一日の始まりの場所である。そして、楽しい一日の始まりを予感できるような場所であるためには、大きな洗面台で自分なりの楽しいデコレーションが出来る余裕が必要であると私は感じる。


洗面所を出て、ベッドルームへと向かった。ベッドルームの床は部屋を明るく広く感じさせてくれるホワイト系フローリング。光が燦燦と降り注ぐ大きな窓があり、天井は打ち放し仕上げにスポットライトが部屋を心地よく演出してくれる。窓の下部はすこし段差となっていて、モノが置けるようになっている。


腰を掛けるには、ちょっと低すぎる。しかし、私は何か置けるものを見てきたような気がした。そうだったのか。私がこの物件に来る途中で寄ったショップのあの家具を置けるスペースとなっているんだ。あのショップで偶然に出会った家具は実は必然であったことに私は気づいた。私はここで住む決心をした。


レガーロ八雲
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