ニッコーアパートメントハウス

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ウォーキングは体にいいと言われているが、あまりにも人が多いところではウォーキングが出来なくて逆に人酔いしてしまいそうだ。ここの街は若者のメッカになった。その象徴として建てられた、このファッションビルもすっかり街に溶け込んでいる。クラインダイサムのデザインも懐かしくも新鮮さが残る。

遠くには、最近注目を集めているファストファッションのお店が見える。黄色い買い物袋を持った女性たちが、楽しそうに話しながら歩いてきた。ここはいつも幸せで溢れている。大きな交差点なのに、スクランブル交差点になっていない場所を通り過ぎるとファストファッションと相対するお店が見えてくる。

ブランドショップは群れをつくる。それは、有名人がパーティー好きと似ているように感じる。常にライバルを求め続け、ライバルと共に自らを鍛えていく。そのストイックさが街を活性化する。郊外に見られるような大型ショッピングモールの一人勝ちは、街を疲弊させ、さらには自分自身をも崩壊に向かう。

ブランドはスター建築家が好きだ。スター建築家は、ブランドの要求に見事に答えていく。それは、戦国時代における豊臣秀吉に石田光成、上杉景勝直江兼続のようだ。ここはブランドの戦場である。そこには黒船もある。今見えている茶色い塊のようなファッションビルがそうだ。MVRDVという黒船だ。

MVRDVはオランダのロッテルダムを拠点とする建築家集団である。建築家の頭文字をとってグループ名としている。だから、そこに深い意味はない。ブランドを受け入れるために、何かこだわった主義主張をもつことは危険であると私は思う。主義主張よりも大事なのは、時代の感性を切り取る能力である。

立ち止まっていると邪魔になるので、ゆっくりと歩き進めることにしよう。ブランドに愛された建築家たちは、たくさんいるわけではない。限られた建築家たちだけが、ブランドに愛され続ける。今、私の目の前に現れたガラス張りの美しく軽やかな建物は、妹島和世の作品である。美しく儚い建物は魅力的だ。

美しく儚い建物と廃墟とは紙一重だと私は感じる。特にこの場所にいると、それを強く感じる。私の目の前に広がっている、この巨大建築物は仕上げが打ち放しコンクリートであるので、仕上げというものがない。廃墟のような脱力的な様相を呈しているが、人間の活力に溢れている。それを求めて人は集まる。

街とは不思議な生き物だと常日頃感じている。この大踊りから、交差点で右には行くと、そこにはオフィスビルがひろがっている。ところどころにショップはあるが小さな昔ながらのショップで世界的なブランドは見つからない。そのようなトリップした感じが味わえるのがTOKYOの大きな魅力のひとつだ。

TOKYOの街歩きは楽しい。結構歩いたのだがあまり疲れを感じない。やっと物件の近くまでやってきた。実はこのあたりは学生時代によくきていた。遊んでいたのではなく、建築探訪をしていた。その頃はポストモダンが流行を極めていた。学生の私は、何だかよく分からなかったが熱中していたのだった。

今振り返るとモダニズムは政治と繋がっていて、ポストモダニズムは経済と繋がっていたのだと思う。ポストモダニズムの成功例は、ディズニーランドであると言う人がいる。私もその意見に賛成だ。歴史的な遺産として有効利用されている唯一無二の存在だ。実は私の目の前にポストモダニズムの建物がある。

この建物はドーリックという。古代ギリシャのドリス式オーダーをモチーフに建物を作り上げている。この建築家は、現在最も勢いがあり世界的に評価が高まっている隈研吾である。私はこの建築家の作品が好きだ。木、土、紙などの自然な材料の可能性を追求する彼の作品は、その自由な発想に心が奪われる。

ドーリックは夕暮れ時の秋の気配を感じる街並みの中で街灯に照らされている姿をみるとポストモダニズムの墓標として、その魅力を失わず、活気ある街を優しく見つめているようであった。ドーリックの角を曲がり細い路地に入っていくと目的の建物が見えてくる。外観のタイルが夕闇に美しく浮かび上がる。

エントランスホールはさほど大きくはない。しかし、コンパクトにメールボックス宅配ボックス、管理人室がまとまっているのは意外と心地よいものだ。エントランスホールの天井が高く外部に面した窓からは気持ちよい日差しがエレベータホールへ私を促しているように思えた。私は6階のボタンを押した。

エレベータはゆっくりと上昇して、6階に着いた。エレベータのドアがゆっくりと開くと、共用部の廊下は絨毯となっていた。タイルの廊下とかだとハイヒールのコツコツという音が意外と響いてきて、気になることがある。このマンションではそのような心配はいらない。夜もぐっすり寝ることができそうだ。

6階の角部屋であった。角部屋は人気が高い。やはり採光として窓を2面取れることがいいのだろう。しかし角部屋にも弱点がある。外部に接する面が多いということは内部と外部の温度差が生じるので壁が結露しやすいということだ。しかし、この話はもう昔話だ。今は壁の断熱性能が高くなっているからだ。

エントランスドアを開けると新築の独特な香りがする。クリーニングの薬剤の香りだが、1回でも他の人が入居したマンションとは明らかに匂いが違う。その匂いは、ワクワク感を高揚させるには十分だ。長い廊下となっている。ベッドルームまでに行くまでにキッチンとトイレとお風呂が両側に広がっている。

キッチンで気になるところは、今使っている冷蔵庫が使えるのかということだ。ここは冷蔵庫専用のスペースが十分に取れていて、その心配はなさそうだ。廊下を抜けてベッドルームに入るとその天井の高さから生じる開放感に圧倒される。優しいフローリングの色合いが疲れた私を心のそこから癒してくれる。

人は尋ねる。そこにお墓があるのは良いのか悪いのか。そのことに私はお答えしよう。答えはお墓が見えるマンションは良い。風水学的によい場所にお墓はある。ためらう必要はない。ここは遥か太古から神々に愛されていた場所なのだ。古代ギリシャの象徴であるドーリックがあることがそれを証明している。

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