SEED+63

http://www.kkf.co.jp/g/pt_house/seed63/

【仁王像がアントニオ猪木!?(その1)】SEED+63は東急池上線「池上」駅から歩くこと5分ほどのところにある。池上本門寺への大通りの脇に入った閑静な住宅が密集している地域だ。池上本門寺のお膝元ということで街は雰囲気は落ち着いており、時にはこどもたちの楽しい笑い声が聞こえてくる。

【仁王像がアントニオ猪木!?(その2)】池上本門寺は、旧寺格は大本山である。山号を長栄山、院号を大国院、寺号を本門寺としており、古くより池上本門寺と呼ばれてきたのであった。また、日蓮上人入滅の霊場として日蓮宗の十四霊蹟寺院のひとつとされており、七大本山のひとつにも挙げられている。

【仁王像がアントニオ猪木!?(その3)】池上本門寺の本殿は、1969年に戦災で焼失した釈迦堂を再建したものであり、戦後に建てられた近代仏堂建築として評価が高い。本殿正面を入ると、左右に祀られている仁王像は、彫刻家の圓鍔勝三によるものであり、なんとモデルはアントニオ猪木なのである。

【浮遊する外観(その1)】閑静な住宅街の小道を進んでいくといきなり個性的な外観の建物が現れる。それがSEED+63である。集合住宅といえば、ヴォリュームがある建築物という印象を持つ人も多いかもしれないが、このSEED+63を見てみると、そのヴォリュームを感じとれないかもしれない。

【浮遊する外観(その2)】その理由は、1階部分がすべて曇りガラスで覆われているために、ガラスの上に建物が建っているような、奇妙な浮遊感がある。建物をガラス張りにして建物をイメージとして消し去る方法もあるが、建物を浮遊させ、そのヴォリュームに軽さを与える方法も街並みに有効のようだ。

【ウッドデッキ・エントランス・アプローチ】エントランスまでのアプローチは重要である。昔の日本家屋においても、門扉から玄関までを庭園のように仕上げて客人を出迎えてきた文化がある。SEED+63のエントランスアプローチはウッドデッキとなっている。この非日常が心地よい感覚を生んでいる。

【魅せるエントランスは図面では分からない(その1)】ウッドデッキのアプローチを抜けて、オートロックパネルの空間に入る。図面で見ると単なる箱である。しかし、実際にその空間を体験すると、魅力的な箱になっているのである。まずは、図面では単なる壁となってるが、左官の鏝で模様を描いている。


【魅せるエントランスは図面では分からない(その2)】その壁を今度は間接照明で照らしているので、鏝で生み出された凹凸がより立体的に浮き上がっている。そして、反対側の壁は足元だけガラスのFIXとなっており、そこには青白い光が放射しており、図面では感じることのできない空間になっている。

【実際はあまり使わないけれども】オートロック・ドアを開けると、そこにはホテルの待合室のようなホールがある。ソファーとスタンドライトが設置してあり、外部のウッドデッキを眺めることができる。集合住宅では必要ではないかもしれないが、生活を豊かにしてくれる装置として機能するかもしれない。

【コンパクトルームの是非を問う(その1)】SEED+63には多くの間取りがある。そのほとんどが20〜22m2という小さい部屋だ。ディベロッパからしてみると部屋を小さく区切って、たくさんの人を入居してもらったほうが合計の賃料は大きくなる。しかし、住む人も小さな部屋では満足しない。

【コンパクトルームの是非を問う(その2)】入居者とディベロッパーの鬩ぎ合いおきる部屋の広さが、20〜22m2なのである。この大きさの部屋を魅力的に作ることができるならば、ディベロッパーと入居者がハッピーになるのだ。では、SEED+63はどのように魅力的な空間を作り出しているのか。

【すべてを見渡せるエントランス】まずエントランス。エントランスは広くて部屋とは扉で区切られていたほうがよい。しかし、それでは20〜22m2に収まらなくなる。とりあえずエントランスからは部屋は見えてしまう。しかし、その緊張感が部屋をキレイにしようとするモチベーションとなるのである。

【床の素材で空間を分けるテクニック】やっぱりキッチンとベッドルームは同じ空間に共存することになる。20〜22m2の部屋では避けては通れない。では、どのようにして空間を分けるか。その答えは床にある。ベッドルームはフローリング、キッチンはタイルというように素材で空間を分けるのである。

【部屋を小さく見せないポイントは窓】部屋を小さく見せないためにも窓選びが重要である。もちろんバルコニーがあるのはいいが、部屋に対して全面がバルコニーに面するよりも、半分だけバルコニーのほうが空間としての変化が出る。バルコニー用の掃きだし窓と遠景を眺める腰高の窓を上手に選択したい。

【どのようなかたちでも収納は必要不可欠】20〜22m2の部屋では、収納が肩身の狭い思いをすることがある。しかし、生活するうえで収納というスペースは必要不可欠である。SEED+63はしっかりと収納スペースをとっている。誇るべきことである。その収納は使い方次第では無限の可能性がある。

【浴室のささやかな贅沢】水周りはコンパクトにまとめられている。洗面台も決して大きくはないが、独立洗面台としての機能は、問題なく果たしている。浴室も大きくはない。けれども、浴室乾燥機が標準で取り付けられているのは嬉しい。さらに、浴室のささやかな贅沢としては、浴室に小窓があることだ。

【SEED、それは新たなるスタンダード(その1)】SEEDと聞いてガンダムSEEDを想起する方も多いだろう。ガンダムSEEDが21世紀の新しいガンダムのスタンダードを目指した種(SEED)であったように、この建物もデザイナーズの新たなるスタンダードを目指して建築されたように思う。

【SEED、それは新たなるスタンダード(その2)】それは、20〜22m2という生活面積のなかで、どのような空間の可能性を引き出すことができるのか、ということである。これからは省エネのコンパクトシティが重要であるように、住まいもコンパクトでありながら豊かさを目指す時代である。(完)

http://www.kkf.co.jp/g/pt_house/seed63/